【2025年最新】ドローン免許(国家資格)完全ガイド|取得方法・費用・必要性を徹底解説

執筆: Soraseed

#国家資格
#航空法

はじめに

ドローン飛行シーン

2022年12月5日、日本のドローン業界に大きな転換点が訪れました。航空法改正により「無人航空機操縦者技能証明制度」、いわゆるドローン国家資格制度がスタートしたのです。

ドローン市場は急速に拡大しており、2022年度の国内市場規模は前年比33.7%増の3,086億円に達し、2028年度には9,000億円を超えると予測されています。この成長を支える基盤として、操縦者の技能を証明する国家資格制度が整備されました。

この記事では、ドローン免許の基本から取得方法、費用相場、スクール選びのポイント、そして2025年12月に予定されている重要な制度変更まで、これからドローンを始める方が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

ドローン免許(国家資格)とは?制度の基本を理解する

正式名称は「無人航空機操縦者技能証明」

一般に「ドローン免許」と呼ばれることが多いですが、正式には「無人航空機操縦者技能証明」という名称で、自動車の「運転免許」とは異なり「技能証明」という位置づけです。

この違いは重要です。免許は一般に禁止・制限されている行為を特定の人に対して許可するものですが、技能証明は必要な技能を有することを証明する資格です。飛行機のパイロットと同じく、ドローン操縦士も技能証明の形式が採用されています。

2022年12月に制度がスタートした背景

ドローン国家資格制度が導入された背景には、複数の要因があります。

レベル4飛行の解禁 最大の理由は、有人地帯における目視外飛行(レベル4飛行)を可能にするためです。これまで日本では安全上の理由から認められていませんでしたが、物流や災害対応などでの活用を促進するため、2022年12月に解禁されました。

安全性の確保 ドローンの普及に伴い、事故や無許可飛行の事案が増加していました。2015年4月の首相官邸無人機落下事件をきっかけに、法規制の検討が本格化し、段階的に制度が整備されてきました。

国際基準への対応 従来、民間団体が発行する資格が複数存在し、基準にばらつきがありました。国家資格として統一することで、国際的な安全基準に対応し、操縦者の技量や知識の証明として一貫性を持たせることが目的です。

免許がなくてもドローンは飛ばせる?

結論から言うと、国家資格がなくてもドローンを飛ばすことは可能です。趣味の範囲で自分の敷地内や許可された場所で飛ばす分には、資格は必須ではありません。

ただし、以下の条件があります。

機体登録が必要 100g以上のドローンを屋外で飛ばす場合、国土交通省への機体登録が義務化されています。登録されていない機体は飛行させることができません。

特定飛行には許可・承認が必要 以下のような「特定飛行」を行う場合は、国家資格の有無に関わらず、国土交通省への許可・承認申請が必要です。

  • 人口集中地区(DID地区)上空での飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人や物件との距離が30m未満での飛行
  • イベント上空での飛行
  • 危険物の輸送
  • 物件投下

飛行禁止空域がある 空港周辺、150m以上の高度、緊急用務空域などでは、原則として飛行が禁止されています。

一等資格と二等資格の違いを徹底比較

ドローン国家資格には「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があります。

一等無人航空機操縦士でできること

一等資格は、すべての飛行レベル(レベル1〜4)に対応できる最上位の資格です。

対応する飛行カテゴリー

  • カテゴリーⅢ飛行(第三者上空での飛行)が可能
  • 有人地帯における目視外飛行(レベル4飛行)が可能

主な用途

  • 都市部での物流・配送サービス
  • 広域インフラ点検
  • 災害時の被災地調査
  • 高度な空撮業務

必要な条件 一等資格だけでなく、第一種機体認証を受けた機体を使用する必要があります。また、飛行ごとに運航管理体制の整備も求められます。

二等無人航空機操縦士でできること

二等資格は、**カテゴリーⅡ飛行(第三者上空以外の特定飛行)**に対応する資格です。

対応する飛行範囲

  • 立入管理措置を講じた上での目視外飛行
  • 夜間飛行
  • DID地区上空での飛行
  • 人や物件から30m以上離れた飛行

主な用途

  • 一般的な空撮業務
  • 農業での農薬散布
  • 測量・建設現場での活用
  • インフラ点検(立入管理区画内)

十分なケースが多い 現状、ドローンビジネスの大半は二等資格で対応可能です。レベル4飛行を行う予定がない場合は、二等資格で十分と言えます。

飛行レベル1〜4の分類と資格の関係

ドローンの飛行形態は、技術的な難易度に応じて4つのレベルに分類されています。

飛行レベル飛行形態必要な資格
レベル1目視内での手動操縦飛行資格不要(特定飛行の場合は許可必要)
レベル2目視内での自動・自律飛行資格不要(特定飛行の場合は許可必要)
レベル3無人地帯における目視外飛行二等資格推奨
レベル4有人地帯における目視外飛行一等資格+第一種機体認証が必須

レベル3.5飛行とは 2023年12月に導入された制度で、レベル3飛行の要件を一部緩和したものです。従来必要だった補助者の配置が不要になり、機上カメラによる監視で対応できるようになりました。

あなたにはどちらの資格が必要か?

二等資格がおすすめの方

  • 空撮や測量などの一般的な業務を行う
  • 農業や点検業務でドローンを活用したい
  • まずは基本的な資格を取得したい
  • 費用を抑えたい

一等資格がおすすめの方

  • 物流・配送サービスを展開予定
  • 都市部での高度な飛行を行う
  • 最上位の資格を取得して差別化したい
  • 将来的にレベル4飛行を見据えている

段階的な取得も可能 先に二等資格を取得してから、必要に応じて一等資格にステップアップすることも可能です。実際、この方法の方がトータルコストを抑えられる場合があります。

ドローン国家資格の取得方法|2つのルートを解説

ドローン訓練風景

国家資格を取得するには、大きく分けて2つのルートがあります。

ルート1: 登録講習機関(ドローンスクール)で学ぶ

最も一般的な方法で、全国に773校(2025年10月時点)の登録講習機関が認定されています。

取得の流れ

  1. 技能証明申請者番号の取得

    • DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)にアクセス
    • マイナンバーカードまたは運転免許証で本人確認
    • 申請者番号が発行される(1週間〜1ヶ月)
  2. 登録講習機関で講習を受講

    • 学科講習: 一等資格18時間、二等資格10時間
    • 実地講習: 初学者・経験者で時間が異なる
    • 修了審査に合格
  3. 指定試験機関で試験を受験

    • 学科試験: 一等70問(75分)、二等50問(30分)
    • 身体検査: 視力、色覚、聴力などの基準
    • ※実地試験は講習修了で免除
  4. 技能証明書の交付申請

    • DIPS2.0でオンライン申請
    • 一等資格は登録免許税3,000円が必要
    • 約10開庁日で証明書が交付

講習期間の目安

資格対象期間費用相場
二等初学者5〜7日15万〜40万円
二等経験者3〜4日7万〜25万円
一等初学者12〜16日60万〜100万円
一等経験者5〜6日20万〜40万円

「経験者」の定義 民間資格(JUIDA、DPAなど)を取得し、一定の飛行経験がある方を指します。経験者として認められると、講習時間が短縮され、費用も抑えられます。

ルート2: 指定試験機関で一発試験を受ける

講習を受けずに、直接試験を受けることも可能です。自動車の運転免許センターでの一発試験と同じイメージです。

試験の流れ

  1. 技能証明申請者番号の取得
  2. 指定試験機関(一般社団法人日本海事協会)で受験
    • 学科試験
    • 実地試験(机上試験、口述試験、実技試験)
    • 身体検査
  3. 技能証明書の交付申請

メリット

  • 講習費用がかからない
  • 自分のペースで準備できる

デメリット

  • 実地試験の難易度が高い(合格率20〜30%)
  • 独学での準備が必要
  • 練習機体の確保が必要

一発試験の受験料

項目一等資格二等資格
学科試験9,900円8,800円
実地試験(基本)22,200円20,800円
実地試験(限定変更)19,800円18,800円
身体検査(書類)5,200円5,200円
身体検査(会場)19,900円19,900円

初学者と経験者で講習内容が変わる

登録講習機関での講習は、初学者と経験者(民間資格保有者)で内容と時間が大きく異なります。

初学者向け講習

  • 基礎から丁寧に指導
  • 飛行時間の確保
  • 法規制の詳細な説明
  • 講習時間が長い

経験者向け講習

  • 一部カリキュラムが免除
  • 国家資格特有の内容に特化
  • 講習時間が短縮
  • 費用が抑えられる

民間資格をお持ちでない方は、先に民間資格を取得してから国家資格にステップアップする方法も検討する価値があります。トータルで約75万円程度となり、初学者として一等資格を直接取得するよりも費用を抑えられる場合があります。

DIPS2.0での技能証明申請者番号取得手順

技能証明申請者番号は、国家資格取得の第一歩です。

取得方法

  1. DIPS2.0にアクセス https://www.dips-reg.mlit.go.jp/

  2. アカウント作成・ログイン

  3. 本人確認書類の提出

    • マイナンバーカード: 翌日〜1週間
    • 運転免許証・パスポート: 2〜14日
    • 本人確認書類の郵送: 約1ヶ月
  4. 申請者番号が発行される

注意点

  • 講習機関への申し込み前に取得しておく必要がある
  • 発行までの期間を考慮してスケジュールを立てる
  • 番号は受験申請や証明書交付申請で使用する

気になる取得費用の相場は?

ドローン国家資格の取得には、講習費用と試験費用がかかります。

二等資格の費用相場

初学者の場合: 15万〜40万円

  • 講習費用: 15万〜40万円
  • 学科試験: 8,800円
  • 身体検査: 5,200円〜19,900円
  • 交付手数料: 3,000円
  • 合計: 約17万〜43万円

経験者の場合: 7万〜25万円

  • 講習費用: 7万〜25万円
  • 学科試験: 8,800円
  • 身体検査: 5,200円〜19,900円
  • 交付手数料: 3,000円
  • 合計: 約9万〜28万円

一等資格の費用相場

初学者の場合: 60万〜100万円

  • 講習費用: 60万〜100万円
  • 学科試験: 9,900円
  • 身体検査: 5,200円〜19,900円
  • 登録免許税: 3,000円
  • 交付手数料: 3,000円
  • 合計: 約62万〜103万円

経験者の場合: 20万〜40万円

  • 講習費用: 20万〜40万円
  • 学科試験: 9,900円
  • 身体検査: 5,200円〜19,900円
  • 登録免許税: 3,000円
  • 交付手数料: 3,000円
  • 合計: 約22万〜43万円

試験料・身体検査・交付手数料の内訳

学科試験料

  • 一等資格: 9,900円
  • 二等資格: 8,800円

実地試験料(一発試験の場合)

  • 一等資格(基本): 22,200円
  • 二等資格(基本): 20,800円
  • 限定変更: 各18,800円〜19,800円

身体検査

  • 書類提出: 5,200円
  • 会場受験: 19,900円

交付手数料

  • 技能証明書交付: 3,000円
  • 一等資格は登録免許税3,000円が別途必要

限定変更の追加費用 目視外飛行や夜間飛行の限定を解除する場合、追加で講習費用が必要です。

  • 目視外飛行: 3万〜5万円
  • 夜間飛行: 3万〜4万円
  • 25kg以上の機体: スクールにより異なる

費用を抑えるコツとは

1. 民間資格を先に取得する 民間資格(15万〜25万円)を取得してから国家資格にステップアップすると、経験者扱いとなり講習費用が抑えられます。

2. キャンペーンや割引を活用 多くのドローンスクールが期間限定のキャンペーンや早割を実施しています。複数のスクールを比較検討しましょう。

3. 補助金制度を確認

  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • 中小企業省力化投資補助金

これらの補助金がドローン関連の機体購入やスクール受講に活用できる場合があります。

4. 必要な限定だけを取得 最初は基本(昼間・目視内・25kg未満)のみで取得し、必要に応じて後から限定変更することも可能です。

5. 複数人で受講 企業で複数名が受講する場合、団体割引が適用されることがあります。

試験内容と合格率

ドローン学習風景

学科試験の出題内容と合格基準

一等資格の学科試験

  • 出題数: 70問(二等相当50問+一等専用20問)
  • 試験時間: 75分
  • 合格基準: 全体で90%以上の正答率
    • 二等相当: 50問中45問以上正解
    • 一等専用: 20問中18問以上正解

二等資格の学科試験

  • 出題数: 50問
  • 試験時間: 30分
  • 合格基準: 90%以上の正答率(45問以上正解)

出題分野

  1. 無人航空機に関する規則

    • 航空法
    • 電波法
    • 小型無人機等飛行禁止法
  2. 無人航空機のシステム

    • 機体の構造
    • 飛行原理
    • バッテリー
  3. 無人航空機の操縦者及び運航体制

    • 操縦者の責任
    • 安全管理
    • リスク評価
  4. 運航上のリスク管理

    • 気象
    • 緊急時の対応
    • 事故報告

試験の形式

  • CBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式
  • 全国の試験会場で随時受験可能
  • 三肢択一式

実地試験の流れと評価ポイント

講習修了者は実地試験が免除されますが、一発試験の場合は以下の試験を受ける必要があります。

試験の構成

  1. 机上試験

    • 飛行計画の立案
    • リスク評価
    • 緊急時の対応手順
  2. 口述試験

    • 飛行前の確認事項
    • 安全管理体制
    • 法令知識
  3. 実技試験

    • 基本操縦
    • 異常事態への対応
    • 精密な飛行制御

採点方式

  • 減点方式(一等: 100点満点、二等: 100点満点)
  • 合格基準: 一等80点以上、二等70点以上
  • 各科目終了時に基準点を満たす必要がある

機体の種類別試験 以下の機体種類ごとに試験があります:

  • 回転翼航空機(マルチローター)
  • 回転翼航空機(ヘリコプター)
  • 飛行機

限定変更の試験

  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 最大離陸重量25kg以上

身体検査の基準

視力

  • 両眼で0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上
  • または一眼が0.3に満たない場合、他眼が0.7以上で視野が150度以上

色覚

  • 赤、青、黄の識別ができること

聴力

  • 10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること
  • または補聴器を使用して聞こえること

その他

  • 身体に障害がないこと
  • または補助手段により操縦に支障がないこと

受験方法

  • 書類提出(医療機関の診断書): 5,200円
  • 試験会場での受験: 19,900円

合格率はどのくらい?

学科試験

  • 一等資格: 約60〜70%
  • 二等資格: 約60〜70%

登録講習機関で十分な準備をすれば、合格は十分可能なレベルです。

実地試験(一発試験)

  • 一等資格: 約20%
  • 二等資格: 約30%

一発試験の実地試験は難易度が高く、多くの受験者が登録講習機関での講習を選択する理由となっています。

修了審査(講習機関) 多くの講習機関が90%以上の合格率を誇っています。講習内容をしっかり理解し、練習を重ねれば合格できる設計になっています。

ドローンスクール(登録講習機関)の選び方

全国に773校の登録講習機関がありますが、質や費用、サポート体制はスクールによって大きく異なります。

全国773校から選ぶポイント

1. 運営会社の実績とノウハウ

最も重要なのは、運営会社がドローンに関する豊富なノウハウを持っているかです。

確認すべき点:

  • ドローンを使った事業を実際に行っているか
  • 空撮、測量、点検など実務経験があるか
  • 卒業生の就職・転職実績
  • 講師の経歴と実務経験

スクール運営だけでなく、ドローンビジネスも展開している機関は、現場に即した実践的な講習を提供できる傾向があります。

2. 講習費用の透明性

ホームページに明確に料金が記載されているスクールを選びましょう。

明記されているべき項目:

  • 初学者向け料金
  • 経験者向け料金
  • 補講費用
  • 再修了審査費用
  • 限定変更の追加費用

問い合わせや説明会に参加しないと料金が分からないスクールは避けるべきです。隠れた追加費用が発生するリスクがあります。

3. アフターフォローの充実度

資格取得後のサポート体制も重要な選定基準です。

確認すべき点:

  • 卒業後の相談窓口
  • 機体購入のサポート
  • 飛行許可申請の支援
  • 定期的な練習会の開催
  • 業務紹介や案件マッチング

業務を始めた際に頼りにできる講習機関かどうかも、重要なポイントです。

4. 立地とアクセス

講習は数日間連続で通う必要があるため、通いやすさも考慮しましょう。

  • 自宅や職場からの距離
  • 公共交通機関でのアクセス
  • 駐車場の有無
  • 宿泊施設の紹介

遠方のスクールでも、合宿形式で対応しているケースもあります。

5. 講習環境と設備

実地講習を行う環境も重要です。

  • 屋内練習場の有無
  • 天候に左右されない講習体制
  • 使用する練習機体の種類
  • シミュレーターの設備

Soraseedのような試験対策サービスの活用

ドローン国家試験の学科試験対策には、専門の学習サービスを活用することも効果的です。

Soraseedの特徴

  • ドローン国家試験に特化したオンライン学習プラットフォーム
  • 実際の試験形式に近い模擬試験
  • 効率的な学習カリキュラム
  • スマホやPCでいつでも学習可能

講習機関での実地講習と並行して、自宅での学科試験対策にこのようなサービスを活用することで、合格率を高めることができます。

選ぶ際のポイント

  • 最新の出題傾向に対応しているか
  • 解説が分かりやすいか
  • 学習進捗の管理ができるか
  • 費用対効果

【重要】2025年12月の制度変更に注意

ドローン資格を取得する上で、必ず知っておくべき重要な制度変更があります。

民間資格による飛行申請簡略化が廃止

2025年12月(予定)をもって、民間資格を証拠とする飛行許可申請の簡略化制度が廃止されます。

これまでの制度 JUIDA、DPAなどの民間資格を持っていれば、特定飛行の許可申請時に一部書類の提出が省略でき、申請が簡略化されていました。

2025年12月以降 民間資格だけでは、以下の飛行における許可申請が煩雑になります:

  • DID地区(人口集中地区)での飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人や物件から30m未満での飛行

注意点

  • 民間資格そのものが廃止されるわけではない
  • 技能や知識を証明するものとしては引き続き利用できる
  • ただし、飛行許可申請の手続きには活用できなくなる

今から取得するなら国家資格一択の理由

2025年12月の変更を考慮すると、これから資格取得を目指す方には国家資格の取得を強く推奨します。

理由1: 飛行許可申請の利便性 国家資格(二等以上)を持っていれば、カテゴリーⅡ飛行において飛行ごとの許可・承認が不要になります(機体認証も必要)。

理由2: 業務上の信頼性 クライアントからの信頼度が段違いです。「国家資格保有」は、操縦技術と知識の確かな証明となります。

理由3: 将来性 ドローン市場の拡大に伴い、今後は国家資格が業務の必須要件となる可能性が高いです。

理由4: 制度の安定性 国家資格は航空法に基づく制度であり、民間資格のような制度変更のリスクが低いです。

民間資格保有者の優遇措置

すでに民間資格を持っている方には、朗報があります。

講習時間の短縮 民間資格保有者は「経験者」として扱われ、講習時間が大幅に短縮されます。

  • 二等資格: 5〜7日 → 3〜4日
  • 一等資格: 12〜16日 → 5〜6日

講習費用の削減 短縮された時間分、費用も抑えられます。

  • 二等資格: 15万〜40万円 → 7万〜25万円
  • 一等資格: 60万〜100万円 → 20万〜40万円

実地試験の免除 登録講習機関で講習を修了すれば、指定試験機関での実地試験が免除されます。

今後の対応 民間資格をお持ちの方は、2025年12月までに国家資格への切り替えを検討することをおすすめします。経験者として優遇措置を受けられるため、比較的スムーズに移行できます。

資格更新の手続きと費用

ドローン国家資格は、取得して終わりではありません。定期的な更新が必要です。

有効期間は3年間

技能証明の有効期間 交付日から3年間です。自動車運転免許と同様に、失効する前に更新手続きを行う必要があります。

更新可能期間 有効期間満了の6ヶ月前から更新手続きが可能です。ただし、有効期間満了の1ヶ月前までに手続きを完了する必要があります。

更新時期の例 2023年1月22日に交付された場合:

  • 失効日: 2026年1月22日
  • 更新申請可能期間: 2025年7月23日〜2026年1月22日
  • 推奨更新時期: 2025年12月〜2026年1月上旬

更新講習の内容と費用

更新講習 有効期間内に、登録更新講習機関が実施する更新講習を受講する必要があります。

講習内容

  • 学科講習: 無人航空機の飛行の安全に関する最新知識
  • 実地講習(必要に応じて): シミュレーター等を活用した演習

重要なポイント 更新講習には修了審査のようなテストはなく、講習を受講するだけで完了します。

身体適性検査 更新時にも身体適性検査が必要です。

  • 書類提出: 5,200円
  • 会場受験: 19,900円

更新講習の費用相場

  • 学科講習のみ: 1万〜3万円程度
  • 実地講習を含む: 3万〜5万円程度

更新申請手数料

  • 技能証明書の更新: 2,850円

合計費用の目安 約2万〜8万円程度(講習内容により異なる)

更新を忘れた場合の対処法

失効後の対応 有効期間を過ぎてしまった場合、技能証明は失効します。

再取得が必要 失効した場合は、新規取得と同じ手続きが必要になります。

  • 登録講習機関での講習受講
  • または指定試験機関での試験受験
  • 多額の費用と時間がかかる

失効を防ぐために

  • 交付日を記録しておく
  • 更新時期の6ヶ月前にリマインダーを設定
  • 早めに更新講習を予約
  • 更新講習修了証明書の有効期間(発行から3ヶ月)に注意

2023年開始のため、初回更新は2026年から 制度が2022年12月に始まったため、初回の更新対象者は2026年から発生します。現時点で30,000名以上が更新対象となる見込みです。

ドローン国家資格を活かせる仕事

空撮風景

国家資格を取得することで、様々な業務でドローンを活用できます。

空撮(年収350万〜640万円)

業務内容

  • 映画・テレビCMの撮影
  • 結婚式の空撮
  • イベント記録
  • 不動産物件の紹介動画
  • 観光プロモーション

必要なスキル

  • 操縦技術
  • 撮影・編集スキル
  • クライアントとのコミュニケーション

年収相場 正社員: 350万〜640万円 フリーランス: 実力次第(100万〜1,000万円超)

特徴 華やかで人気の分野ですが、競争も激しいのが現状です。技術と営業力があれば、非常にやりがいのある仕事です。

測量・建設(年収400万〜600万円)

業務内容

  • 建設現場での測量
  • 3Dマッピング
  • 工事進捗管理
  • 土量計算
  • 地形調査

必要なスキル

  • ドローン操縦
  • 測量の知識
  • データ解析スキル
  • CAD/GISソフトの操作

年収相場 正社員: 400万〜600万円 測量士資格も併せて持っていると、さらに重宝されます。

特徴 建設業界は人手不足のため、ドローン操縦士の需要は今後も伸びる見込みです。安定した収入を得やすい分野です。

点検・インフラ保守

業務内容

  • 送電線・鉄塔の点検
  • 橋梁・トンネルの点検
  • 太陽光パネルの赤外線診断
  • 建物外壁の調査
  • プラント設備の点検

必要なスキル

  • 精密な操縦技術
  • 赤外線カメラの知識
  • 構造物の理解
  • 点検報告書の作成

特徴 高所作業のリスク低減や人手不足の解消として、需要が高まっています。専門知識が必要な分、高単価な業務が多いです。

農業・林業

業務内容

  • 農薬・肥料の散布
  • 生育状況の調査
  • 鳥獣被害調査
  • 苗木・資材の運搬

特徴 農業分野は国の補助金制度も充実しており、導入が進んでいます。食料自給率向上の観点からも、今後の成長が期待される分野です。

物流・配送(レベル4飛行)

業務内容

  • 離島・山間部への配送
  • 医薬品の緊急輸送
  • 災害時の物資輸送
  • 都市部での宅配(将来)

必要な資格 一等資格+第一種機体認証が必須

特徴 2022年12月のレベル4飛行解禁により、ドローン物流の事業化が加速しています。楽天などが先行してサービスを展開しており、今後市場が拡大する見込みです。

市場予測 ドローンビジネス市場全体で、2028年度には9,000億円を超えると予測されており、物流分野がその成長を牽引すると期待されています。

よくある質問(FAQ)

Q1: ドローンを趣味で飛ばすだけなら資格は不要ですか?

A: はい、趣味の範囲であれば国家資格は必須ではありません。

ただし、以下の条件があります:

  • 100g以上の機体は国土交通省への機体登録が必要
  • 特定飛行(DID地区、夜間、目視外など)を行う場合は許可・承認申請が必要
  • 飛行禁止空域では飛ばせない
  • 航空法や電波法などの法令遵守は必須

趣味であっても、ドローンに関する基本的な知識は身につけておくことを推奨します。

Q2: 100g未満のドローンも規制対象ですか?

A: 100g未満のドローン(トイドローンなど)は、航空法の規制対象外です。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 機体登録は不要
  • 小型無人機等飛行禁止法の対象(国会議事堂周辺、皇居周辺など)
  • 電波法の規制は適用される
  • プライバシーや迷惑防止条例には注意

100g未満であっても、常識的な範囲での使用を心がけましょう。

Q3: 独学で国家資格は取得できますか?

A: 可能ですが、難易度は高いです。

独学が向いているケース:

  • すでにドローンの操縦経験が豊富
  • 自分で練習機体を用意できる
  • 練習場所を確保できる
  • 自己管理能力が高い

独学の課題:

  • 実地試験の合格率が低い(20〜30%)
  • 正しい操縦技術を習得しにくい
  • 法規制の理解が不十分になりがち
  • 練習環境の確保が困難

推奨: 初学者は登録講習機関での講習受講をおすすめします。実地試験が免除され、正しい知識と技術を効率的に習得できます。

Q4: 民間資格を持っていると有利になりますか?

A: はい、国家資格取得において大きなメリットがあります。

具体的な優遇:

  • 「経験者」として講習時間が短縮(二等: 3〜4日、一等: 5〜6日)
  • 講習費用が抑えられる(二等: 7万〜25万円、一等: 20万〜40万円)
  • すでに基本的な知識と技術があるため、講習がスムーズ

注意点: 2025年12月以降、民間資格だけでは飛行許可申請の簡略化ができなくなります。民間資格をお持ちの方は、早めに国家資格への切り替えを検討しましょう。

Q5: 一等資格と二等資格、どちらを先に取るべきですか?

A: 目的によりますが、多くの場合は二等資格から始めることを推奨します。

二等資格から始めるメリット:

  • 費用が抑えられる(初学者で15万〜40万円)
  • 講習期間が短い(5〜7日)
  • 一般的な業務は二等資格で対応可能
  • 二等資格取得後、必要に応じて一等へステップアップ可能

最初から一等資格を目指すべきケース:

  • レベル4飛行(有人地帯・目視外)を確実に行う予定
  • 物流・配送事業を計画している
  • 最上位資格で差別化したい
  • 予算に余裕がある

段階的取得のコスト例: 民間資格(20万円) → 二等資格(経験者10万円) → 一等資格(経験者25万円) = 合計約55万円

これは、初学者として一等資格を直接取得する(60万〜100万円)よりも費用を抑えられる場合があります。

Q6: 資格取得後の機体登録は必要ですか?

A: はい、100g以上の機体を屋外で飛行させる場合、機体登録は必須です。

機体登録と資格の関係:

  • 機体登録: 機体そのものの登録(所有者情報、機体情報)
  • 技能証明: 操縦者の技能の証明

両方とも必要な手続きで、一方を取得しても他方は別途必要です。

機体登録の手順:

  1. DIPS2.0にアクセス
  2. 機体情報を登録
  3. 手数料の支払い(オンライン: 900円/1機、書類: 1,450円/1機)
  4. 登録記号の発行
  5. 機体に登録記号を表示

リモートID 2022年6月20日以降に機体登録する場合、リモートIDの搭載が義務化されています。

まとめ: あなたの目的に合った資格取得を

ドローン国家資格は、2022年12月に始まった新しい制度ですが、ドローンビジネスを展開する上で今後ますます重要になっていきます。

この記事のポイント:

  1. ドローン免許(国家資格)は必須ではないが、業務利用には推奨

    • 趣味の範囲なら不要だが、特定飛行には許可が必要
    • レベル4飛行には一等資格+機体認証が必須
  2. 一等と二等の違いを理解して選択

    • 二等: 一般的な業務に対応(カテゴリーⅡ)
    • 一等: レベル4飛行が可能(カテゴリーⅢ)
  3. 登録講習機関での受講が主流

    • 実地試験が免除される
    • 正しい知識と技術を効率的に習得
    • 費用は二等7万〜40万円、一等20万〜100万円
  4. 2025年12月の制度変更に注意

    • 民間資格による飛行申請簡略化が廃止
    • これから取得するなら国家資格一択
  5. スクール選びは慎重に

    • 運営会社の実績
    • 費用の透明性
    • アフターフォロー
  6. 資格は3年ごとに更新が必要

    • 更新講習の受講
    • 身体適性検査
    • 費用は2万〜8万円程度

次のステップ:

  1. 自分の目的を明確にする

    • 趣味か業務か
    • どのような飛行を行いたいか
    • 予算はどのくらいか
  2. 登録講習機関を比較検討

    • 複数のスクールの資料を請求
    • 説明会や体験会に参加
    • 費用とサポート体制を確認
  3. 学科試験の準備を開始

    • Soraseedなどの試験対策サービスを活用
    • 航空法などの基本知識を学習
  4. 講習を受講して修了審査に合格

    • 実地講習で実践的なスキルを習得
    • 学科試験に合格
  5. 技能証明書を取得して業務開始

    • 機体登録も忘れずに
    • 飛行許可申請の手続きを理解
    • 安全運航を心がける

ドローン市場は今後も拡大が見込まれ、2028年度には9,000億円を超えると予測されています。国家資格を取得することで、この成長市場でのビジネスチャンスを確実につかむことができます。

まずは、あなたの目的に合った資格から取得を検討してみてください。ドローンの可能性は無限大です。